鉱石ラジオを楽しもう

鉱石ラジオ

鉱石ラジオを楽しもう

 昔々,まだICやトランジスターがなかった頃,ラジオ放送が始まりました.ラジオ放送を聴くためには真空管を使ったラジオがありましたが,とても高価でした.このラジオ放送を手軽に聞くために鉱石ラジオが使われました.
 この鉱石ラジオは電気や電池を使いません.完璧なエコラジオです.
ラジオ受信用のアンテナから拾った微弱な電波のエネルギーをそのまま利用してイヤホンを鳴らしてくれます.
 この鉱石ラジオの音は何とも言えない安らぎの音を出してくれます.
 今や時代遅れの鉱石ラジオですが,鉱石ラジオを作ったり,聞いたりして楽しみましょう .

この鉱石ラジオのホームページでは,身近にある物を部品として利用して鉱石ラジオを作る楽しみを紹介します.
皆様からの投稿もお待ちしています.

日本のラジオ放送は1925年3月1日放送開始,「あーあー聞こえますか? 」日本放送史上初めて,肉声が電波にのった日です. 同7月12日より本放送を開始 

鉱石ラジオとは

鉱石ラジオは次の部品の組み合わせで構成します.
鉱石ラジオの回路図
1.アンテナとアース
2.同調回路
3.検波回路
4.レシーバー 
この部品の検波回路に鉱石を用いたものが鉱石ラジオです.
ラジオ放送の電波を受信する場合,電波から音声信号を取り出す(検波という)には,電流を一方向だけ流す整流作用を持つ鉱石に電気信号を通します.
整流作用を持つ鉱石には,方鉛鉱,黄銅鉱,黄鉄鉱,紅亜鉛鉱,閃亜鉛鉱等があります.
これらの鉱石の結晶の表面の適切な位置に細い金属線(「猫のひげ」と呼ばれています)を接触させると,整流作用を持つ性質があります.
鉱石へ接触させる金属線の接触位置によって整流作用の状態が大きく変わるため,微妙な調整が必要で,この場所を探し当てるのも楽しみの一つです.

鉱石ラジオを上手に鳴らそう

鉱石ラジオはアンテナで捕らえられた微弱な電波を検波してレシーバーから音を鳴らします.

1.アンテナば10m以上のビニール線を用意しましょう.
2.アースを必ず付けましょう.
なるべく長いアンテナとアースを付けることにより鉱石ラジオをきれいに鳴らすことができます .

ゲルマニュウムラジオとは

ゲルマニウムダイオード

上記の鉱石の代わりに,ゲルマニウムダイオードを用いたラジオをゲルマラジオまたはゲルマニウムラジオと呼んでいます.
ゲルマニウムダイオードは鉱石よりも小さく,安定した性能を得ることができます.


My Vintage 鉱石ラジオコレクション

私の鉱石ラジオのコレクションです.

鉱石ラジオ1 鉱石ラジオ3 鉱石ラジオ2

鉱石ラジオの参考となる書籍としてCrystal Clear Vol1 Vol2 がお勧めです.
Amazon から手配可能で,USAからの取り寄せで少し時間はかかりますが,送料もリーズナブルな料金で入手することができます.写真が豊富で,鉱石ラジオの写真を眺めるだけでも楽しめます.
ClistalClear書籍


国内の 書籍としては小林健二さんの「ぼくらの鉱石ラジオ」がお勧めです.
本サイトに多数投稿して頂いているJR1MXXさんの記事がある「ゲルマラジオ制作徹底ガイド」もお勧めです.

もっと詳しく 鉱石ラジオ

鉱石ラジオで受信する前提のラジオ放送だった

鉱石ラジオは欧米で1907年頃から作られ始めました.
日本では1924年頃から作られ,JOAK東京放送,今のNHKラジオ第一放送が1925年に始まりました.
当時の真空管ラジオはとても高価で,一般の方は鉱石ラジオで放送を聞いていました.
1928年(昭和3年)に感度の良くない鉱石ラジオで全国どこでもラジオが聞こえるように出力を増強する「全国鉱石可」と呼ばれる事業が始まりました.
当時は鉱石ラジオでの視聴を前提としたラジオ放送でした.

鉱石ラジオの構造

鉱石ラジオは次の4つで構成します.
1.アンテナとアース (とても重要です)
2.同調回路 コイルとコンデンサによる共振回路
3.検波回路 ここに鉱石 又はゲルマニュームダイオード
4.受話器  レシーバー ハイインピーダンスで感度の良いイヤホンを使います.

1.アンテナとアース(とても重要です)

鉱石ラジオは増幅器を持っていません.
アンテナで捕らえた電波のエネルギーで音を鳴らしますので,なるべく大きなアンテナが必要です.
最低でも10mのビニール線を室外の高い所に張ってください.
鉄筋住宅の場合はベランダの物干しを利用してみてください.
10mの線が長すぎる場合は折り返しても良いので張ってください.
アースも重要です,アンテナで捕らえたエネルギー地面へ流すことで電波の流れが作り出されます.
エアコンのアース端子等室内のアース端子か,なければ台所の水道の蛇口にクリップを付けてそこに接続すればアースになります.

2.同調回路

同調回路はコイルとコンデンサーを並列に接続します.
同調とはコイル(L)とコンデンサー(C)によって特定の周波数に共振することにより,特定の周波数に同調させ放送波を拾い出します.
同調回路の共振周波数は 1/(2π√(L*C))で計算できます.
数値を入れると計算してくれるサイト 共振計算 
例えば160pfのバリコンを持っていて,150pfでNHKラジオ第一放送 594kHz に同調するようにしたいがコイルLの値が知りたい
このサイトで数値を入れて計算すると 448μHで 594.3 kHzとなります. 
448μHにするにはコイルはどのくらい巻く必要があるかを計算してみましょう
コイルの計算ができる便利なサイト 
このサイトを使って計算してみます.比透磁率=1 コイルの半径 3㎝ コイルの長さ 10㎝とした場合 巻き数は127回でL=451.8 µHとなります.
円周は2πr で計算すると0.1884m 0.1884mに巻き数127を掛けるとコイルに使う線の長さは 23.9mとなります.

3.検波回路

検波は同調回路により拾い出された放送の信号を整流して放送の電波に乗せて運ばれてきた音を取り出す回路です.
放送の信号を一方向へ流れるようにすることにより音として取り出すことができます.
検波に利用できる鉱石は次の物があります.
方鉛鉱 黄鉄鉱 黄銅鉱 斑銅鉱 磁硫鉄鉱 硫化鉄 紅亜鉛鉱 閃亜鉛鉱 自然銅 粒状二酸化マンガン

鉱石の入手方法

「方鉛鉱」「黄鉄鉱」はネット通販でも販売しています.
オークションサイトやフリマサイトでも入手できるようです.
鉱石の探り機構 鉱石さぐり機構は自作することにになります.
鉱石の受け台は溶かしたハンダを容器に入れその上に鉱石を載せて冷やします.
針はニクロム線が良いです
圧力を調節できる仕組みを用意し,ニクロム線を鉱石に差して都度感度の良い場所を探します.

ゲルマニュウムダイオード

ゲルマニュウムダイオードはゲルマニュームを原料とした半導体です.
順方向電流がおよそ0.1mAの時,順方向降下電圧が0.2Vと,低電圧領域での動作特性が良いために,ラジオでアンテナからの電波を直接を扱うなどといった鉱石ラジオの用途に適しています.
ゲルマニウムダイオードは熱にとても敏感です.
接合部の最大温度は75℃で,はんだ付けによる熱ストレスを避けるためにリード線を極力切らないでご使用しラジオペンチでリード線を挟んで熱を逃がしながら半田付けをします.
ゲルマニュウムダイオードの入手方法
IN60 等通販や電子部品専門店で購入可能です.

4.受話器 レシーバー

鉱石ラジオのレジーバーとして,マグネチックレシーバー,クリスタルイヤホーン,セラミックイヤホーンが利用できます.

マグネチックレシーバー

インピーダンス2kΩのコイルを巻いて磁石の両側に配置し鉄板を振動させて音を鳴らします.
現在発売されていませんのでオークションサイト等で探すしかありません.
レシーバ(受話器)展示室 ここで沢山のマグネチックレシーバーが展示されています. 

クリスタルイヤホーン

ゲルマニュームラジオの定番としてクリスタルイヤホーンが使われていました.
ロッシェル塩を発音体に用いたクリスタルイヤホンは,潮解(湿気で結晶構造が崩壊する現象)が生じると使用不能になる弱点があります.
このため現在では生産されていません.

セラミックイヤホーン(現在入手可)

クリスタルイヤホンの代わりとして利用されているのがセラミックイヤホンです.
インピーダンスが高く,セラミックコンデンサーと同様な構造で直流抵抗はほぼ無限大なので耐圧の範囲内であれば結合コンデンサー等を介せずに回路に直接接続できるのも特長です.
ゲルマラジオのキットで現在発売されている物にはこのセラミックイヤホーンが入っています.

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