温泉と無線の珍道中/7L3ATQ 

7L3ATQ 岡本 博

 全国的に月遅れのお盆休みに突入し、恒例の民族大移動が始まりました。

嬉しい事にATQの勤務するT社も8/11~8/17の7日間の大型連休。

あれ?お前は7月の末に夏季連休を取り、北海道で避暑して来たんじゃな かったけ?そんなに休んでばかりいて良く会社(社内分社)が潰れないね。

と言う皆様の声が聞えてきそうですね。
  はい お陰様で今の所は大丈夫です。でも来年当たり危ないか? おっと冗談から…なんて事にならないように クワバラ クワバラ。

 8/9までの姫路出張でビジネスホテルのクーラーに当たり夏風邪をひき絶不調のままお盆連休に突入。
ここでめげては「必殺!旅の無線仕掛け人ATQ」の名がすたる。何がなんでも行くっきゃない!!と言う訳で無線と写真と山の道具を“動くシャック”にぶち込みさあ出発!。

いつもなら当然前日の夜発ですが今度ばかりは全く体が言うこときかない。
やはり50を過ぎるとなかなか無理がきかないものですね。トホホホ……。

 8/11(金)昼に多摩市を出発、ところがこんな状態なので頭がボケたATQは結局3回も忘れ物を取りに戻り最終的に出発できたのは15時すぎ。
あーあーまた先が思いやられる旅になりそうだ。

 事前の交通情報で、首都高は既にお盆帰省ラッシュが始まり大渋滞とのこと。府中→武蔵野市→練馬区→和光市のルートで東北道浦和まで3時間。

何時もより1時間余計だがこの時期ではやむを得ないか。
幸い他の高速道では既に数10kmの渋滞が始っているが、ここ東北道はまだ順調に流れている。
あとは眠気との戦い、特に今回は会社の診療所で処方された風邪薬をバッチリ飲んでいる。ところが何故か今回はぜんぜん眠くならない。

 おかしいなー??さてはいつも会議中に居眠りをして「T社スイミングクラブ会長」(もちろん泳ぐのではありません睡眠ingです。)とか「居眠り狂四郎」の異名?を持つATQのため診療所の先生が覚醒剤を一服盛ったか?。

 20時に那須高原SAに到着、遅めの夕食を摂り前日殆ど寝ていないので取り敢えず仮眠する事にしよう。
ところがお盆の帰省でごった返すサービスエリア内はウロウロと空きを探す車と歩き回る親子連れに場所をわきまえずクラクションを浴びせる無神経なドライバーが多くうるさくてとても寝ていられない。
諦めて行けるだけ行ってみよう。 

 覚醒剤?の効き目か不思議と眠くならず快調に走って長者原SAに到着。

ここは宮城県古川市にあり、マガンの飛来で有名な伊豆沼が近く、ATQが夜明待ちの時間調整にいつも使う所。
結局多摩市を出発して丁度9時間、お盆の東北向け走行にしては順調な1日目が無事終わり、お休みなさい。

 一夜明け最初の目的地伊豆沼へ。伊豆沼と隣の内沼は冬のマガンと共に夏は蓮の名所。
ところが昨年は発芽後の水没で全滅、回復には2~3年掛ると言われていたが実際にはどうだろうと立ち寄って見たのだが……。

 やはり地元の方が言われて通り両沼とも申し訳程度に咲いているだけ。

蓮の花は来年以降に期待して本業の鳥探しへ周回道路をパトロールしよう。

 どこへ行っても最近は鳥の数、種類とも激減していると感じているのですが、やはりここ伊豆沼でも多く見られるオオバンが僅か1個体、沢山見られるのはおなじみのカルガモばかり、うーーん残念。
その他に今年の春に仲間と伴にシベリヤに帰る事が出来なかった傷ついた白鳥が数羽、なにか悲哀を感じます。
周回道路では釣りをしている人が多いので声をかけてみれば何とブラックバス釣りとの事。
伊豆沼、内沼は内水面漁業権を持ち小鮒や小海老を獲り漁業で生計を立てる漁民も大勢いるはず。
所かまわずレジャーフィッシングの為 にバスを放流する心無い人(あるいは釣り具メーカー???)の影響で元々棲息している個有種が全国的に激減している状況は自然保護派ATQとしては心が痛むばかりです。

 バードウォッチングは早々に切り上げ前日の寝不足と運転疲れを解消のために30分離れた築館郡金成町の町営温泉“延年閣”へ。
ゆったりと温泉に浸かり3時間程休憩。
最近は廉い料金でゆっくり入れる公共の温泉が各地に出来、温泉と旅大好き人間ATQはおお助かりです。

 一関ICより再び東北道に乗り次の目的地は知る人ぞ知る酸ヶ湯温泉。

途中和賀郡沢内村の和賀岳で移動運用中のJN1QPC/7岩附さんへお声掛け。
岩附さんは武蔵野市の方だが過去3回の交信は全て移動どうし(江刺市/7vs北上市/7、北巨摩郡須玉町/1vs韮崎市、上水内郡戸隠村/0vs大野郡丹生川村/2)、お互い移動大好き人間、話が弾んだことは言うまでもない。

 十和田ICで下りて鹿角市から鹿角郡小坂町の発荷峠へ。
峠からの眺望は素晴らしく眼前に広がる十和田湖に思わず「また来たよ!」と御挨拶。

 湖畔の和井内、休屋の旅館街に近づくとどの旅館も“空き室有り”の札が出ている。
更に車が止まるとわっと集まる客引きのおじさん・オジサン。

ええっ!今日はお盆前の土曜日なのに?。でも飛び込みで泊まれるか内心心配していたATQとしては一安心。
それにしても日銀総裁殿、まだゼロ金利解除は一寸早いんじゃない?とエコノミストの声が聞えてきた気がします。

 子の口からは渓谷散策で余りにも有名な奥入瀬へ、なんと言っても秋の紅葉の時期が一番ですが深い緑に覆われ、白い水飛沫と木漏れ日の絶妙な駆け引きも見逃すことは出来ません。皆様も是非一度お試しあれ。

 奥入瀬渓谷を抜けダケカンバ、オオシラビソ(青森トド松)の樹林帯を走ること僅かで今日の目的地酸ヶ湯温泉へ到着。
フロントで1泊を請えば部屋は自炊部だが2食付きで宿泊可とのこと。大きな声では言えないが長引く不況もこう言う時は少しは役に立つものですね。

 旅行雑誌やポスターに何十回も登場した総ヒバ作りの千人風呂は何回入っても素晴らしい。
舐めると飛び上がるほど酸っぱい強酸性の湯は北海道の十勝岳温泉、宮城県の須川温泉と並んで特筆物で如何にも効能が有りそうな気がして来る。
勿論昔から混浴と相場が決っているのだが最近は少し事情が変わって来た様だ。
21~22時、8~9時までの女性専用時間の設定は当然としても、テレビの温泉番組そのままに身体にバスタオルを巻きつけたまま浴槽に入る輩が増えているのは困ったものだ。
「浴槽内にタオルを入れるな」の注意書きが沢山貼ってあるのに…。
もうもうと立ち昇る湯気と白濁した湯船で気にしなくても何も見えないのだから。
温泉番組の方も“これはテレビ放映のためタオルを浴槽に入れていますが、実際にはタオルを浴槽にいれてはいけません”とテロップを流すべきであろう。

 いかん いかん 又々一言居士の悪癖が始った。

 いよいよ八甲田登山のその日(8/13)は「天は我を見離さず」早朝から絶好の登山日和。
カメラ3台とハンディ機、アンテナ・ポール・三脚のおなじみATQセットを携え、地味な山シャツ山ズボン、麦藁帽子に首から双眼鏡のいでたちは正に自然保護委員のおじさんそのもの。
でも結構これが役に立って登山道からはみ出して写真を撮るハイカーに「自然保護のため登山道から出ないで下さい」と注意すると素直に聞き入れてくれるのです。 (因みにATQは日本自然保護協会と日本野鳥の会のメンバーです。)

 酸ヶ湯温泉の脇の登山道から沢沿いに歩き1時間半位で千人岱の水場へ到着。
ここは豊かな湧き水の出る美しい湿原帯、山としては少し時期が遅いせいか高山植物はコバギボシ、ウサギギク、ミヤマアキノキリンソウ、ウメバチソウ、ミヤマリンドウ、ヨツバシオガマ、コバイケイソウと種類が少なくチングルマは既に箒状の種子になっている。
千人岱から急な登りを約1時間稼げば八甲田の主峰大岳1584.6m山頂へ。眼下には青森市街と陸奥湾、待機中のカーフェリーまで肉眼で確認できる。
更に西側に目を転じれば秀麗な姿を見せる津軽の象徴岩木山、世界遺産に指定された白神山地、奥羽山脈と登りの疲れを忘れさせてくれる絶景が広がる。

 景色を堪能した後は勿論定番の移動運用 。
早速ATQセットにVX-1でCQCQ、さすがにここまでくれば北海道からも声が掛る。
青森港でフェリーの順番待ちのJL1WCF/7白井さんは川崎のローカル局だ。結局7エリア6局、8エリア4局で千歳市のJK8SPQ福嶋さんは3回目の交信で又会いましたねと話しが弾む。これだから移動運用は止められない。

 帰路は上、下毛無平(けなしたいと読む 誰だ!ATQにピッタリの地名だなどと言っているのは。)の美しい湿原を廻って酸ヶ湯温泉へ戻る。

 登山で少し疲れたのと湯治気分を味わうため、連泊の申し出に相部屋であれば泊まれるとのこと。
勿論こちらに異存は無く、同室の客と旅情報を交換する一時は思わぬ収穫があり楽しい旅の一駒になることが多い。

 旅の夜は温泉談義に花が咲く、玉川、国見、後生掛、夏油、青荷、峨々、等々東北は名湯が目白押し、中でもこの酸ヶ湯は堂々の横綱格とくれば温泉に入らない手は無い。
結局2泊で8回も入りすっかりリフレッシュしたATQでした。(これで髪の毛が増えれば言う事は無いのですが……。)

 酸ヶ湯温泉二日目の朝(8/14)も絶好のハイキング日和。 
車で青森側へ10分程移動し、八甲田ロープウェー山麓駅へ。往復1800円はチト高いが僅か10分で標高1300mの田茂萢岳湿原に運んでくれる。

ここには1周約1時間で美しい湿原を堪能できる散策コースが整備されている。
体力の無い貴方!にお勧めのお手軽プランですよ!。

 八甲田は早々に切り上げ次の目的地岩木山へ、コースは黒石市→南津軽群田舎館村→南津軽郡尾上町→弘前市→中津軽郡岩木町と車を進める。

 途中の町村はHFで運用すればパイルを浴びそうな所だがMobie Whipの調子がイマイチでSWRが下がらない。
ウーーン6エリアで頑張るJF1RWZ岡村さんに声を掛けなければ申し訳無いのだが。

 13時過ぎに岩木山スカイラインの終点八合目駐車場に到着。
お盆の真直中、頂上に岩木山神社をお祭りする信仰の山“お岩木山”の駐車場は空き待ちの車が数珠繋ぎ。
とても図々しく八木やGPを立てる雰囲気では無い、取り敢えずMob.WでCQを始めることにしよう。145 FMで6局と交信、やはり8エリアが近く5局が津軽海峡を越えてのQSOでした。一頻り交信が終わったとき突然

「もし もし」

「もし もし」

の声が飛び込んできた。

「???QRZこちら7L3ATQ/7中津軽郡岩木町岩木山移動局ですが当局にお声かけでしょうか??」

「もしもし こちら白神岳頂上ですがこちらから見える岩木山は頂上に傘雲が懸かっていますよ」

 ここまで聞いてやっと意味の判ったATQは恐る恐る。

「あのー コールサインはお持ちでしょうか?」

「コールサインは有りません」

「あのー コールサインが無いと交信は出来ないのですが……。」

無線を始めて7年弱、延べ23000局と交信しているATQもアンカバーから声を掛けられたのは始めて。
この場合応答したATQも電波法違反になるのでしょうか?。
兎に角頂上付近の豊かな自然に付いて少しだけ情報をもらい早々に退散して頂いた。
でも何か世界遺産の白神岳が急に身近になった気がして来た。よし!来年あたり登ってみよう。

 岩木山下山後は弘前市→黒石ICのルートで東北道に戻り、八幡平鹿角ICでから今日の宿泊地八幡平の後生掛温泉へ。
ところが途中夕日を背に静かに噴煙を上げる焼山の写真を撮っている内に到着が遅くなり、冷たく満員ですと断られてしまった。
幸い近くの観光ホテルに投宿出来たが後生掛に比べるとかなりスケールが小さい。また次回に期待しよう。

 翌日(8/15)は前日に懲りて仙北郡田沢湖町を通過し、岩手郡雫石町の国見温泉に立ち寄り予約を入れてから男鹿市の寒風山へ移動した。

 ルートは仙北郡田沢湖町→仙北郡角館町→仙北郡共和町→河辺郡河辺町→秋田市→南秋田郡天王町→最終の男鹿市まで約170km結局3時間以上の長躯遠征となった。あーあー疲れた!移動運用も楽じゃない!。

 寒風山は男鹿半島の付け根に位置し、干拓ですっかり小さくなった八郎潟を見下ろす標高355mの小山であるが無線のロケーションは抜群。

0エリアは勿論9、4まで2mFMで聞えると言う。
かく言うATQも2年程前に石川県輪島市の舳倉島か らVX-1 500mWで寒風山移動局とQSOしたことが有る。
折りからの快晴とお盆休みが重なった寒風山駐車場はシルバー財団?の交通整理員が大勢出る程の賑わい。
岩木山に続いてここでもまじめにアンテナが出せずMob.Wで145FMで運用開始。
やはり準備が悪いのか思ったほどお声掛けがない、僅か4局でQRT。捲土重来また来年に期待しよう。

 国見温泉は高山植物の宝庫秋田駒ヶ岳の南側の登山口がある、秋田- 岩手の県境の岩手側にある鄙びた湯治場。
あ!そうそう 秋田駒ヶ岳は有名な乳頭温泉郷の奥に有り、日本一の深さを誇り神秘的な美しさを湛える田沢湖を眼下に見下ろす秋田の名峰。
高山植物種類、密度ともに豊富で深田久弥の“日本百名山”に何故選ばれなかったのか?と不思議に思うのは山好きのATQだけではあるまい。

 国見温泉は余り全国的には有名でないが強烈な硫黄の臭いと物凄く多い湯の花、それでいて緑色の澄んだ一趣独特の個性的な温泉である。

 皆様も秋田にお越しの際は一度話のネタに訪れては如何でしょうか。(交通は秋田新幹線田沢湖駅からタクシー約15km詳しくはATQツーリスト??へお尋ね下さい。)

 国見温泉でまたまたふやけた後はいよいよ東京に向けて帰路に着く。

盛岡ICから東北道に乗り快調に南下、今日(8/16)はお盆帰りの交通渋滞ピークの日。
流石にこの辺りではまだ通行量は多くなく、120kmくらいで流れている。
2時間半程走り国見SAを過ぎた辺りから車の数が段々多くなり、福島盆地に入るととうとう渋滞の最後尾に追着いた。
電光掲示板によると20kmの渋滞とのこと、どうせ17日まで休みだし、そんなにいそぐこともあるまい。
福島西ICで高速を降り吾妻スカイラインで浄土平へ向う。
ここで6月の初旬に咲く高山植物のイワカガミは見事なものでATQの知る限りでは日本一規模である。
浄土平の駐車場にはビジターセンターと福島市立の天文台があり、星空ウォッチングのメッカにもなっている。
徒歩20分程で登れる吾妻小富士は小型の火山で噴火口の周りを一周できる手軽なハイキングコースとして観光客の人気が高い。 

 浄土平を過ぎて会津側に少し下ったヘアピンカーブの所が移動運用のポイント 0、9、1エリアと簡単にVUで繋がる有名な“双竜の辻”である。
ただここの欠点はいまだに1640円も取る有料道路内にあるため宿泊場所と何回も往復出来ないことである。
今回も宿泊を土湯峠の傍にある幕川温泉に飛び込みで行くため此処での運用は諦めた。
運良く泊まれた幕川温泉は2軒の鄙びた温泉宿がぽつりと山陰に点在する静かな佇まいで連休の最後を落ち着いて過ごすにはふさわしい。

 宿泊の手続きを済ませてから土湯峠に戻り、連休最後の移動運用。

“動くシャック”の屋根にGPを立てVUで13局と交信、今回の旅で始めて移動運用の気分を味わうことが出来た。
ここのポイントは福島の“中通り”と“会津”の分水嶺、7エリアはもとより0、1エリアにも良く波が飛ぶ。
16時に撤収し、最後の夜はまたまた温泉三昧。 本当に温泉大好き人間!ATQなのでした。

 連休最終日(8/17)は予定通り5時前に起き、雲海の下に眠る福島盆地を横目に眺め「千恵子抄」で有名な安達太良山の山麓を駆け抜け二本松ICより東北道へ。
やはり「早起きは三文の得」一度も渋滞捕まること無く10時前に多摩市に到着。

 結局全走行距離2100km、全交信数50局。
  終わって見ればとても“無線と温泉の旅”どころではなく単なる“温泉三昧の旅”でした。まっいいか! 
涼しくなったらまた伊豆七島へでも行ってこの穴埋めでもするか。
待てよ地震は大丈夫かなあ……。ウーン自信が無いなー。 

 

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