Hallicrafters SX-28 

第一章 怪物 SX-28 

      
Hallicrafters SX-28 "Super Skyrider" は,1940 年から 1946 年にかけて米国で製造された短波帯の通信型受信機で,アマチュア無線,政府,軍事用通信として広く使用されました.
sx-28                                       

ある日、何か出物はないかとオークションの受信機のコーナーを眺めていると、、、なんだこれは!、怪物みたいな顔をした受信機を発見した。 Hallicrafters の往年の名機 SX-28 である.
sx-28部品部品
ケースとフロントパネル ツマミやダイヤルメモリ 内臓 バリコンは4連である 何とかハリクラフターズ SX-28 真空管通信型受信機 ジャンク を競り落とす
ハリクラSX-28はネット上に資料が公開されていた
ギヤーの仕組みもだいぶわかってきたぞ、、、、、
バリコンはダブルギヤで回転する仕組みで 糸で引っ張るのはどのバンドを受信しているか矢印表示をバックライトで表示する仕組みだ。 これは凝っている。
マニュアルはしっかりしており回路図もある。
部品組み立て

設計者の拘りが凄い! バリコンは4連あり、高周波2段中間周波2段低周波3段構成のシングルスーパーである。
スプレッドバリコンを見て驚いた。 9R59や9R42Jでは1枚羽のバリコンでスプレッドしているが、3組づつ4連が準備されている。
回路図を良く見ると、バンド切り替えスイッチでスプレッドバリコンも切り替えされており、6-16pf、6-5-23pf、6.5-28pfとバンド毎に可変容量が変わっている。
へえ~! こ、これは~! これはスプレッドする周波数を前提にしてバンド毎に容量を設計してスプレッドバリコンを特注したとしか考えられない。
これ以外にも増幅回路の付いたノイズリミッター、クリスタルフィルターも付いている。
CQ出版社発行のVintage Radio Collectionでは、SX-28は「Super Skyrider」と命名された名機で軍用としてソビエトに送られロシア戦争で使用されたと説明されている。

Hallicrafters SX-28(A)基本仕様は次の通り

Type: General Coverage Modes: AM/CW
Tubes/Stages: 15/ 2-RF, 2-IF Audio Output: 2-6V6/8W Product Detector: None
Filter: Crystal New Price/Year: SX-28 $159.50/1941, SX-28A $220-$280/1944-45
Size: 10.0"h x 20.5"w x 14.75"d Approx. Weight: 75 lbs
Tube Complement: 6AB7 rf1, 6SK7 rf2, 6SA7 mixer, 6SA7 hfo, 6L7 if1/anl, 6SK7 if2, 6B8 avc amp, 6B8 det/s-meter, 6AB7 noise amp, 6H6 noise rect, 6J5 bfo, 6SC7 af1, (2) 6V6 af out, 5Z3 rect.

■ SX-28のリストア

SX-28のリストアのために部品を手配した。
ペーパーコンデンサーと電解コンデンサー、そしてボリュームを交換すべく、部品表をチェックしてネットで部品を発注した。
デジタルマルチメータ METEX P-16(下図左)は70年前に製造されたペーパーコンデンサーの容量ぬけがどの程度あるか調べたくコンデンサーの容量も図れるテスターであるが、これは周波数カウンターとしても使える優れものだ。
部品

■ METEX P-16のレンジ ・DCV: 600mV~600V ・ACV: 600mV~600V ・DCA: 600μA~600mA ・ACA: 600μA~600mA ・抵抗値:600Ω~60MΩ ・周波数:6000Hz~60MHz ・容量測定: 6000pF~6000μF 秋月電子通商で2.1k円で購入。
鈴メッキ線やチューブも手配した。 SX-28のリストア用に手配した部品や測定器
電解コンデンサーの大きさも70年の年月の差は大きく耐圧450Vのものでもこんなに違う。
コンデンサコンデンサ

ペーパーコンデンサーは右図のような感じで配置されている。配線に傷をつけないよう注意して取り外す。
シャーシの内部が暗いため下図のように三脚に付けたスポットライトで照明をしながら作業する。

照明
シャーシに黄色の付箋紙が見えるが、これは作業効率を上げるために真空管の名前と機能を書いて貼っている。
デジタルテスターとアナログテスターを使い分けよう。
道通(0Ω)を調べるには何といってもアナログテスターが便利だ、何故かは実際にやってみるとわかるはずだ。
回路を追いながら、調べ終わった部分を赤で塗って行こう。コンデンサーは回路図と同じであるが抵抗値は時々違っていた。
回路図が全て赤で塗られたら完成となるのだが。

回路図パネル
つまみも取り付けたのでフロントパネルのイメージもSX-28らしくなってきた。
進捗率は30%程度であろうか、12月にはスピーカーを取り付けて通電テストができるように進めたいと思っている。
SX-28は高周波2段中間周波2段のシングルスーパーであり、真空管が15本使用されている。

回路図
ほとんどの真空管はメタル管である。
SX-28かSX-28Aか調べたが、私の入手したマシンは、コイルの配置図からSX-28であることが判明、
SX-28は1941年から1944年にかけて製造されている。
1945年になるとSX-28Aが発表されている。 これに使われているコンデンサーや抵抗はまさにオリジナルであり、真空管もその当時のままである可能性がある。
はたしてこの真空管が生きているものかどうか知りたくなってきた。
え~い、それならと真空管試験機を入手しちゃえ!とYAHOOオークションを狙ってみるが安い物で20K高い物になると100Kもする。
この値段の違いは何なのか、と調べてみると、安いものはエミッションを測定して合否を判断するタイプ、高い物はGMを測定できる物だそうだ。
使えるかどうかの判断ならエミッション測定タイプでOKのようだが、それでもちょっと高い。
eBayで探すとエミッション測定タイプは30ドルから100ドル程度で取引されていたがセカイモンの対象外となっている。
セカイモンへメールで問い合わせしたが、真空管試験機は対象外にしているとつめたく返事が返ってきた。(現在は大丈夫なようです)
しかたがないのでYAHOOオークションの出物を待っていると
試験機
「真空管試験機 945-G ジャンク」
パイロットランプが点灯のみ確認です 真空管リストのロールは、最後まで巻き取ります ジャンク品です、部品取にでも使って下さい
ノークレーム・ノーリターンでお願いします スタート価格は1500円 8名での競争となったがリーズナブルな価格で落札した ラッキー!
資料を取り寄せ恐る恐る使ってみたが、何とか使えそうである。
手持ちの真空管を試験してみると殆どの球は緑の「GOOD」ゾーンに入るが、ある球は「REPLACE」ゾーンになりそのままほっておくと段々温まってきて黄色のゾーンに入りもっと待っているとグリーンのゾーンに入った。 これはまさにエミゲンの球なのであるが、エミゲンの球も時間をかけて暖めると使える領域になるのだと、老後も諦めず時間をかけて努力すれば何とかなるのだと教えられたような気になった。
真空管のほのぼのとした灯りとぬくもりを感じながらコーヒーを飲みながら午後のひと時を楽しんだ。
kh6yq
図 SX-28のシャック KH6YQ

ラストスパート


SX-28をとにかく鳴るようにしてケースに収めて新年を迎えようと心に決めて、測定器を引っ張り出した。
各真空管を念のため調べておこうと思い1本づつ抜いて汚れを拭いていて始めて気がついたのだが、真空管のソケットに真空管の名前が刻印してあった。この拘りにもビックリした。
ソケット
図「真空管の名前が刻印された真空管ソケット」
最後のチェックとしてB電源がプレートに配線されている事と5極管はスクリーングリッドにB2が来ている事をテスターで確認した。
ヤバイのは、プレートにBが来てなくてスクリーンにだけB2があると真空管をダメにしてしまうのでプレートにBが来ている事は重要なチェックだ。
それではドキドキする瞬間!いよいよ電源投入である。 スピーカーも接続し「スイッチオン」! うんともすんとも言わない。
それでは、AF電圧増幅回路のグリッドへドライバーを付けてみると、ブーンとハム音がした。 よしよし、AFは大丈夫だ、
それではとシグナルジェネレータを取り出し455kHzを入れて中間周波をシンクロで拾ってみると、波形は見えていた。
ダイヤルを回すと波形が大きくなったり小さくなったり何かの放送を受信しているようだ。 しかし、スピーカーからは何も聞こえてこない。
検波がうまくいっていないのか?と首をかしげた。
ワゴン
「ワゴンの下段に部品箱 上段に本体 シグナルジェネレータ:SG 手前がシンクロ」
「回路図」
回路図
検波の部分は6B8の2極管による何の変哲もない回路で異常はなさそうであった。
IFT T2の後にクリスタルフィルターが入っており6段階に帯域が選択できるようになっているが、シンクロで当たっていくとどうもここらあたりにIF信号が出てこないようである。
それではと持ち合わせのトリオのIFT T11これは9R59等にも利用されていたIFTとしては選択度の高い高性能なIFTなのだか、宙ぶらりんの配線でT2を置き換えてみた。
するとバリバリと大きいノイズが出始めてチューニングを取るとAM放送が聞こえた。
バンザーイ! ラジオ少年の感激の瞬間だ。
オリジナルの回路の水晶周りに問題があることが分かったので、この部分をバイパスしてとりあえず受信できるように変更した。
後日時間ができたら1941年に設計されたクリスタルフィルターの実験をしてみたい。
調整六角
さあ調整だ、お決まりのコースでまずIFTを455kHzにチューニングし、バンドスイッチを切り替えてOSCを調節してトラッキングを合わせ、高周波増幅、混合、のトリーマーで高感度で受信できるように調節していく。
掃除機でもう一度細かなゴミを吸いケースに格納する。
六角レンチでケースに組み込む このダイヤルを見てヨ。
ダイヤル完成

バンドスイッチを切り替えるとバックライトに照らされている「→ ←」「↓」が受信しているバンドに動くのです。
もう一度ラジオ少年にもどろう! ラジオ中年! … いやラジオ高齢者でもいいや!

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